2017年11月26日
スタート30秒前。私の左前方にライバルOさんの黄色いトライクを認めます。さあ、今日はガチンコで勝負、
5、4、3、2、1、スタート!
先導車の誘導があるローリングスタートなのでゆっくりと動き出します。
徐々に速度を上げて行きますが、まだまだ大集団のままで私でも置いて行かれることなくついていけています。しかし、この先のビクトリーコーナーで集団落車の可能性も否定はできないので安全に回避できそうなポジションを探して動きます。リカンベントはロード比べて、機敏な動きが得意ではないのです。
セカンドアンダーブリッジを通過中に、下りから登りへと勾配が変わります。そしてここから700mが登り区間です。ここをいかにこなすかが、勝負の分かれ目となるでしょう。駆動がかかるとシフトしにくくなるフロントを早めにインナーへ落とし、リアをシフトアップして対処します。傾斜に合わせてリアも落としていきます。
リアは12t~27t 9sコグを付けています。重ければ脚の筋肉への疲労が蓄積されてしまいますが、かといって軽ければ高ケイデンスを要求されるので、それが出来なければ速度低下を招いてしまいます。今日はすこぶる体調がよく、38t×21tでガンガン登っていけました。
登り切る直前にフロントをアウターへ入れ、速度を回復させていきます。ヘアピンカーブが目前ですが、坂を登ってきた自転車の速度では減速する必要など全くありません。ヘアピンを抜けると向かい風の下り坂になります。ドラフティング出来そうな列車を探します。
ヘアピンを抜けると猛烈な風圧を感じます。早く誰かの後ろに付きたいところ。前の集団に無理してでも追いついておくか?まだ1周目だぞ、無理して大丈夫か?
私の脚ではちょっと無理だったみたいです。まだ始まったばかりですから無理せず、左の後ろに入ります。すいません、ちょっと風裏使わせてください。Vコーナー30Rが迫ってきます。
Vコーナーを抜けても下りはまだまだ続きます。S字カーブ70Rです。速度はどんどん上がってきています。
このS字コーナー60Rを抜けきったら、このコースで最もスピードの乗る130R手前の直線へ突入です。
空気抵抗の少ないリカンベントではブレーキをかけないとドラフティングが続けられそうもありません。右へ進路を変更し、ドラフティングでお世話になった集団へ追い越しをかけます。メーターは53㎞/hを示しています。
ファーストアンダーブリッジ通過。この直線で4台の前へ出ます。よし、今度は前を引くぞ。でもごめんね、私の後ろについても十分なドラフティング効果は得られないでしょうね。
第5コーナー30Rを駆け抜けていきます。前の集団に追いついちゃいましょう。
ガンガン踏むと見る見る前の集団に近づいていきます。
第4コーナー70R、第3コーナー30Rで前の集団を捉えます。
今度はこの集団について行こう。
第2コーナー45R、第1コーナー45Rもついていきます。ここから向かい風ですから、ドラフティング出来なければ私の脚では売り切れはすぐ訪れてしまいます。
メインストレートへ帰ってきました。1周目の計測タイムは9分13秒265でした。1周回9分以内を目標にしていますが、1周目はローリングスタートなのでどうしても余分い時間を喰ってしまうので十分なタイムといえるでしょう。
2周回目は8分45秒062、なんとか9分以下を守っています。この調子であと1時間40分がんばれば、目標の14周回目に入れることでしょう。問題は後半にペースがたれることです。脚を残せるようにドラフティングを積極的に利用しないといけません。
3周回目、8分49秒279。この周回ではほとんどが独走となってしまったのですが、それでも何とか9分を下回っています。
4周回目、ついに最後尾を捉えました。Iさんの乗る超ロングホイールベース車を登りで抜き去ります。この辺りから足がよく回るようになってきました。
登りで置いて行かれてしまうので、どうしても向かい風の下りは独走状態になってしまうことが多いですね。やはり登りでロードと同等に渡り合えなくてはその後も厳しいのです。
何とか追いつき、ドラフティングに成功。するとその脇を先頭の大集団が追い越していきます。ものすごい迫力です。左に見える地を這うようなトライクはハンドサイクルです。手でクランクを廻し、前輪を駆動させます。一番最初にこのレースに出た時には、彼らに負けてしまったっけなあ。4周回目のタイムは8分37秒876、今回の最速ラップタイムをたたき出しました。
5周回目、タイムは8分52秒802。
Aさんを発見。あれ、いつも私と競う位置にいるのに、今日は遅れていますね。しかもリカンベントライダーを前に3台も入れていますよ。体調不良でしょうか、気になります。
超軽量チタンフレームにカーボンシート、カーボンエアロホイール、そして11速アルテグラという最もレーシーなリカンベントを操るMさんを登りで抜き去ります。この辺りからシフターの調子を崩してしまったということで、メカトラに私の順位は助けられたような感じです。機材スポーツですから、機材の調整も勝負のうちですけどね~。
Yさんはミラーで私を認め、ガッツポーズで応援してくださいました。
6周回目、タイムは9分00秒092。ついに9分を越えてしまいました。しかしながら、走行中では電光掲示板の時刻表示から計算しているので9分を越えたことは気がついていませんでした。今までの分の貯金があるのでそれでもかまわないと言えば構わないのですが。
7周回走行中、1時間経過。これなら14周回目に入るのはギリギリだけどなんとか間に合いそうだな。
あれ、最強ライバルOさんの乗る黄色いトライクを捉えます。
「あれ、Oさん!」
驚いて声が出てしまいました。
てっきり後ろにくっ付いているものだとばかりに、ミラーで探しながら必死で逃げていたのです。追い越しざまに伺った話では、膝が限界とのことでした。
トライクは下りが速いぞ。抜かされないようにガンガン踏んでいくぞ!
7周回目のタイム、9分06秒588でした。あれ、貯金を使ってきているな、と電光掲示板からの計算でもわかるくらいの遅れです。遅くなってきたぞ、何とかしろ、俺!
登りでの速度低下が一番の要因であることは間違いありません。上る途中で最も遅くなった時のメーター読み速度が3周目あたりでは21㎞/hでしたが、その前の周回では14㎞/hまで落ちてきています。
よし、ギアを落とさずにガンガン踏んで行こう。下りになればドラフティングして休めるはずさ。
しかし、ドラフティングさせてくれそうな列車は影も形もありません。独走状態が続きます。それでも遅れるな、時間の遅れは取り返せないから、つぶれるのを覚悟して踏み倒せ!
8周回目、8分49秒887と遅れは取り戻せるくらいがんばれました。このペースが最後までもてば、14周回には楽に入れるはずです。
あれだけの大集団がどこへ行ってしまったのでしょうか、ガラガラのコースを走ります。9周回目、8分56秒156でした。独走状態ながら、何とか9分を下回っています。
そして、10周回目のラップタイムは9分12秒448です。スタートライン通過時刻は15時29分台でした。これなら、30分以内に3週できればもう一周、つまりは14周回できることになります!
だいぶ日が傾いてきました。日陰では寒さを感じるようになってきました。
さすがに疲れを感じてきました。ここでペースダウンしては今までの苦労は水の泡となります。すると天の助け!横を集団が抜いていくではありませんか。
その最後尾につかせてもらい向かい風のホームストレートに備えます。11週回目、ラップタイムは9分02秒173でした。
12週回目、8分51秒562。
もう日暮れ間近です。
13周回を走り終えました。電光掲示板の示す時刻は15時56分30秒です!ついに、目標としていた14周回目に突入します!
ダウンヒルストレートを登り切ったところで、MCによるカウントダウンが聞こえました。
「5,4,3,2,1、お疲れさまでした~!」
何をのんきに、こっちはまだレース中だぜ。それに総合狙いの連中はゴールスプリントに備えてポジション取りで集団の中バチバチだろうて。
その、先頭集団が後ろから迫ってきていることを先導車がクラクションで教えてくれます。その直後、ホイールの転がる音が聞こえ、猛烈な勢いで追い越していきます。側にいるだけで風圧を感じ、怖いくらいです。もちろん選手も殺気立っています。
一気に駆け抜けていきました。先頭の大集団はゴールスプリント勝負になるでしょう。
先頭集団はあっという間に遥か彼方です。さあ、俺も頑張るぜ、最後の力を振り絞って速度の維持に努めます。脚の筋肉に疲労を感じます。自分の限界はここか?いやまだまだ先にあるさ!
ゴール!14周回2時間05分54秒、14周回目ラップタイムは9分23秒627でした。
表彰式では念願の中央に立つことが出来ました。
終了後、車を取りに行き、荷物の回収に再びパドックへ戻ってきました。無人のパドックはがらんとしていました。
ありがとうございます。マラソンは自分との戦いですが、自転車の場合他人の風裏に入れるので楽もできるのです。敵ながら、協力すべきところでは心を合わせてという駆け引きの面白さがあります。一度いかがでしょうか?
ありがとうございます。リカンベントという非常に狭いカテゴリーではありますが、それでも優勝は嬉しいものです。
ありがとうございます。沢味家さん、ぶーぶーさんとマラソンの人からの祝福は本当にうれしいですね。自分の限界は体が決めるもの、気持ちが決めるのではないということを心の底から感じました。総合では111位でしたから、次はさらに上を目指していこうと思っています。
トレー忍苦(これ、勝手な変換ですが、結構いけてる)の成果が出ましたね。その大事な途中に1日遊んで下さいまして、、、どんなことでも1位をとるのはすごいことです。
長々した文章をお読みいただき、ありがとうございました。山のmochiさんとのハイキングから中3日という日程は最高の調整になったようで、自分で思う以上の結果を出すことが出来ました。筋肉痛は残さない程度で、なおかつ心肺には楽をさせないというのは案外難しく、標高がある所で運動するのは良いことのようです。
むしろ私の方こそ、トレーニングにお付き合いいただいた感じです。ありがとうございました。そして、本当に楽しいツーリングでした。