いよいよ来週早川尾根と甲斐駒なのですが、暑くてバテ気味、準備があまり進んでいません。仕事が急に立て込んだりしていることも原因に挙げたいところです。
山旅は、できるだけテント、テント禁止の場合には(しかたなく)山小屋素泊まりを旨としている私なので、今回も当然テントを持って行きます。
ケチだからではないですよ。お金がないから、と言われるとうなずくしかありませんが。とにかくテントが好きなのです。そして、自分で担ぎ上げたもの以外で生活することに違和感を感じるのです。ヘリで上げた食事を食べることを潔しと思えないのです。
大学時代、サークルで八ヶ岳の県界尾根を登った時のこと。予定では行者小屋まで下りて幕営の予定でしたが、天候が悪化し断念、展望荘にお世話になることにしました。食事を作ろうと、雨の中合羽を着て外でストーブのプレヒートをしていると、展望荘のご主人が声をかけてくださいました。
「土間があるから、中でやっていいよ。あなたたちはストーブを使い慣れているみたいだからさ、炎上なんてさせないだろうから。」
お言葉に甘えて、山小屋内でストーブを使わせていただきました。そして、小屋の食事を食べないのに申し訳ない、と詫びると、
「自分で担いできたものを食べる。山なんだから当然だよ。商売だからね、いろいろ工夫してやっていて、たぶんバイキングなんてうちが初めてだと思うけど、これだって高いのに少ないっていう客が多いから始めたんだ。まずい、少ない、高いって毎日苦情言われていたから。これで少ないだけは言われなくなった。だいたい、担ぎもしないで文句言うやつなんて、山来ちゃいけないんだよ。どうやって持ってきていると思っているんだろうね。テント担いできて、食事も持ってきて、悪天候だから逃げ込む。理想的だよ。俺は正しい登山家は商売にならなくても大歓迎だよ。」
と言ってくださったのです。そんなこともあり、幕営にはこだわりを持っています。
さて、理想の山岳テントの条件として、①自立式であること ②雨でも出入の時にテントの中に吹き込みにくい構造であること ③結露が少ないこと ④組み立て、分解が容易であること ⑤なるべく軽量であること ⑥風に耐性があること ⑦換気が良いこと ⑧虫が寄り付きにくい色であること、などを挙げたいと思います。さらに言えば、経済的に長持ちする材質、構造であってほしいものです。
①をクリアするには最低2本ポールが必要で、⑤をクリアするには最高で2本までで済ませたいところです。
②をクリアするには、前室が設けられるダブルウォールテントであるべきで、それは③、⑦もクリアさせやすくなります。
④は片閉じスリーブ式が良い、という向きもありますが、組み立てはともかく、分解時にはポールが中で外れてしまわないように押し出す必要があり、また、ポールを入れたり引き出したりする時に、ほかの方の敷地内に入らないように気を使う必要もあります。なので、フック式の便利さを知ってしまうと二の足を踏んでしまいます。
⑥はあまり全高が高くなく、風をはらみやすい突起が出ていないものが良いと思われます。
⑧は、どの色がいいのか、実験したことがないのでわかりません。アライテントはフライの色が選べたりしますが、虫が寄り付きにくい色はどっちかわかれば、そちらを選びたいところです。
以上のような結果、2本ポール交差式、ダブルウォール、フック式の、山岳テントが私の好みということになります。そして、プロモンテ(DUNLOP)VLシリーズなら、ほぼ文句なしという結果から、VL31を所有し、十分満足しています。
しかし、山行形態によってはこのテントも万能ではありません。妻の参加の時は、多少重くても(私ががんばればいいだけなので)居住性の良いテントの方が当然良く、その場合にはポールが凝っていてやたらと重いK405を、車やカヌーなど、重量を気にせずに済むならさらに居住性がよく、耐風性も高い5本ポールのヨーレイカ!マウンテンパス5を使用しています。
今回は単独行です。以前はその場合でもVL31を使用していました。しかし、無駄に広いテントはやはり重量も無駄なので、2年前にオークションで落札したのが今回使う予定のモンベル ブリーズドライテック モノフレームシェルター ヘキサです。点検のため、張ってみました。自立しないので重しを使用します。

このテントは、上で上げた理想とはことごとく相反します。自立しません。シングルウォールテントです。雨の中、ファスナーを開けると容赦なく吹き込みます。透湿素材ですが、やはり結露します。2名で寝ても、荷物も入れられるスペースは十分ありますが、壁から離しておかなければなりません。構造上、横からの風に耐性がありません。スリーブ式で、片閉じでもありません。換気は出入口の上部、もしくは扉を開けて行うだけです。吹き流し式ベンチレーターはありません。ブリーズドライテックは、説明書にもある通り、大変にデリケートで、長期の使用には不安があります。
メリットは、軽いこと。組み立て、分解も、ポールが1本のせいもあり、スリーブ式の割には簡単です。フライがないのは組み立ての手間が半分以下という感じです。他には安い、というか安かった以外、これといったメリットは感じません。
でも、これでいいのです。この製品には、テントではなく、シェルターという名前を与えられています。テントまで要らないからツェルトにしようか、という時に、ツェルトより快適に過ごせるその中間的な存在ととらえると、メリットが見いだせます。宿泊予定が、稜線のテン場ではない、大雨が降りそうではない、雪は降らない季節、と限定すると、これで十分快適に過ごせます。
実測重量の比較(すべてケース、張綱を付けた状態)
VL31
ポール 450g
本体 920g
フライ 576g
合計 1,946g
ヘキサ
ポール 229g
本体 1,094g
合計 1,323g
どちらもペグはほぼ同じペグで、本数も同じ8本です。ケース込みで110gでした。結構違うものでしょう?ダイヤやビビィザックだと、どんな感じなんでしょうね。海外メーカーだと、棺桶タイプもありますが、あれだと腰痛くなりそうな予感。