昨日はさらっと流しましたので、今日は2本のM42ロシアレンズをクローズアップ。
ロシアレンズはケースが妙に凝っています。
ジュピター9は透明なドームの中、黒い蓋はスクリューでしっかりと固定されています。そしてその蓋にM42の雌ねじが切ってあり、ねじ込んでしっかりレンズが固定できます。ゼニタールはざっくりした肌触りの布ケースで、クッション入りです。レンズと付属のフィルターケースを仕舞うことができます。両方に言えることですが、レンズを守る機能に特化していて、速写という面では何一つ考慮されていません。向こうでは素人向き高額商品という位置づけなのでしょうか。
ジュピター9 1:2 85㎜
このレンズは、絞りに特徴があります。一番驚くのが、絞り羽の数。多いほど真円に近づくのですが、ふつう6枚程度、5枚というのも珍しくない中、なんとこれは15枚もあるのです。写真では分かりにくいでしょうか。
ちょっと油にじみがあるのはご愛嬌。そして絞りリングも独特の工夫があります。絞りリングはふつう一番手前にあるのですが、このカメラはなぜか先端にあるのです。絞りリングを回して絞ってみます。絞りは解放のままです。カメラ側のレバーで撮影時にだけ絞るというわけではありません。絞りリングの手前にあるリングが、本当の絞り駆動リングなのです。たとえばf4で撮影しようとします。まず、絞りリングをf4に合わせます。そしてファインダーをのぞき、構図、ピント合わせをします。そして絞り駆動リングを回すと、f4の所で停まります。測光をして露出を適正にしたら、シャッターレリーズ。この仕組みなら、カメラ側がよほど特殊でない限り使えるでしょう。
三脚でカメラを固定し、同じ被写体に対して、同じ焦点距離のレンズで、同じ絞り、同じシャッター速度で撮影して、スライドマウントには番号のみ記入。そしてライトボックスに乗せてルーペで観察、どのレンズで撮影したかを当てる遊びがあります。平安貴族たちが匂いを当てる遊びをしていたそうですが、まあ、それの現代版といった雅な遊戯ですね。
私の場合、スーパーマルチコート(smc)の施されているPENTAX FA☆1:1.4 85㎜というピンのレンズとの比較になってしまうので、やはり解像度、色味ではとてもかないません。しかし、軽量コンパクトという面ではこちらに軍配が上がるので、軽量を望む場合には必然の選択となります。写真の難しいところは、その現場にいないと撮影できないわけで、絵画のようにあとから描くという技が全くできません。持ち運びも性能の一つと捉えると、その点ではこちらに軍配が上がります。コートが貧弱なので逆光や微妙なカラー表現ではもろに弱点を露呈してしまいますが、順光、人物といった85㎜レンズらしい使い方なら独特の味わいが楽しめます。
さて、次はゼニタール1:2.8 16㎜ FISH‐EYEを見ていきましょう。あんまり安いので、5000円札で銭足ーる。お粗末!
同じロシアレンズでも、こちらの絞りは普通の位置に、6枚羽で普通です。普通の位置にあるので、LXの絞り確認窓で値がみられるのですが、そこはスクリューマウントの悲しさ、ぴたりと線の位置が窓の位置にこないので、22が見えても実際には11だったりします。
レンズの裏に、フィルターが付けられます。
フィッシュアイでも、申し訳程度のフードが付いています。乱反射防止を狙ってのことでしょう、内側にひだが刻まれています。結構凝ったつくりです。
リバーサルで撮影してきますので、レンズ比較はまた、今度。
値段のことを考えれば、ロシア製レンズは気軽にあそべる、カメラ好き絶好のおもちゃなのですね。
ボクのカメラのスタートは親父が戦地に持ち歩いた蛇腹のセミ版フィルムカメラで、これでカメラのおもしろさを知りました。距離、絞りとシャッター、フィルム巻き上げ、全部を感だけでやるもので、こういうカメラで練習するとカメラの原理がよく身につき、大失敗(巻き取ったときフィルムを取り落とし全コマ感光してアウトとか二重撮りとか)もあって、とてもよい薬にもなりました。撮れるコマ数も少なく、気軽にパチパチ撮るものではなかったから、表現的上達はできませんけれど。