今日はちょっと変わったところで、書評を書いてみます。本のタイトルは大世、サッカー選手の鄭 大世(チョン テセ)のことです。この本は息子が学校の図書館から借りてきたもので、この試験期間中に何を考えているのかと思ったら、試験後に読むというので放置してありました。天候に恵まれず外遊びができない私、暇つぶしに読んでみたら、その日のうちに全部読み終えてしまいました。
 
鄭 大世と息子の出会いは5年前です。柏レイソルファンだったので、時々試合を見に連れて行ってました。なかなか試合開催日に休みが取れなかったので、年数回しか連れて行けませんでした。まだ小学生でしたから、保護者抜きで行かせるわけにはいきません。
 
2008年5月25日、その日は妻と、K氏3人でツールド桜川に出場しました。この日はK氏の車で行ったのです。桜川と言う名前ですが、旧地名でいえば真壁です。イベント終了後、自転車と妻はK氏に頼み家まで持って行ってもらいました。私はTXつくば駅まで送ってもらいました。とんでもないわがままでしたが、K氏は快く引き受けてくださいました。
 
つくばからTXで柏の葉まで。ここで、北千住乗り換えで来る息子と待ち合わせ、一緒に柏レイソルの応援に行きました。当時レイソルはホームグラウンドが日立台と並行して柏の葉も使用していました。100㎞走った後で、かなりの強行スケジュールですが、そうでもしなければプロの試合を見せることはできないのです。
 
相手は川崎フロンターレ、ナビスコカップの予選です。結果はレイソルの勝利でしたが、川崎も1点もぎ取りました。その、1点を決めたのがチョンテセでした。決して足技の優れた選手ではないのですが、強靭な体で強引に血路を開いてゴールまでボールを運ぶ姿に敵チームでありながら息子は引かれていました。
 
それからしばらくは、息子は筆箱やノートに「鄭 大世」と落書きしていました。こいつの落書き癖はまだ治りきっていないのですが、小学生の時はそれはひどいもので、すべての持ち物が落書きの対象でした。いったいこの持ち主は誰なんだ?
「お前が鞄落として交番に届けられたら、川崎に届けられちゃうぜ。」
そんな話も冗談にならないくらい書かれていました。
 
TV番組、やべっちFCに出た鄭 大世は、とにかく陽気でよくしゃべる男でした。プレースタイルも、性格も全く違う息子は憧れ、心酔していました。
 
そんな鄭 大世でしたが、ドイツのチームへ移籍してしまいました。あとは北朝鮮代表としてプレーする時に見られるくらいでしょうか。そんな鄭 大世ですから、学生時代から代表入りしてとんとん拍子でプロ選手になったのだと思っていました。
 
しかし、この本を読んで全くの思い違いだったことに気が付きました。案外内気だったこと、なかなか芽が出なかったこと、泣き虫だったこと。天狗になって鼻を折られたこと。彼もずいぶん心が折れていたのです。その時に出会った人たちが彼を支え、成長させてくれたのでした。
 
それから、民族と国籍の問題もありました。お父さんが韓国籍、お母さんが朝鮮籍、彼はそのままでは北朝鮮代表にはなれないのです。しかし、出身学校は朝鮮学校、彼は民族の誇りを持って北朝鮮代表を目指すのです。
 
そもそも、親がどこの国籍を持っているかで子供の未来が決まってしまう変な仕組みです。ある年齢に達したら本人に選ばせていいのではないでしょうか?まして民族分断は全く彼の責任ではないのに、ずいぶん重荷を背負わせています。また、日本人の中には差別的な態度をとるものがすくなからずいて、同じ日本人として恥ずかしい思いがします。
 
息子は試験が終わったら読むでしょう。腰を痛めて自信を無くしていますが、自分だけではなく、みんな苦しい状況から死に物狂いで頑張って、這い上がってきたことを知るでしょう。そして、その努力こそが自分を救う唯一の方法であると理解できるでしょう。
 
サッカーを志す者だけでなく、どんな人も読めば何らかの前向きの感情が芽生えてくると思います。そしてレイシスト達は自分たちがいかに小さく、バカな存在だったかを知ることになるでしょう。
 
いい本を借りてきてくれてありがとう。でも、まずは試験の残り教科頑張れよ。