歌集、風祭(かざまつり)

ひとつことに集中してしまう性格なので、ここの所ブログを書くことさえ忘れて縫製を楽しんでいたわけなのですが、案外体力、精神力を消耗する作業でもあってここの所それも休むことにしました。かといって緊急事態宣言下の関東では出かけることも憚られます。そんな時には本でも読みますか。

ここで手に取ったのがタイトルの本です。短歌とはなじみがない私ですので文学的価値についてはほとんど解することはできないのですが、この本の面白さはそこだけではなく失われた物への追憶が記されている所にもあるのです。失われた物、それは時代と一言で言ってしまえるのかもしれませんが、しかしそれにかかわった人々の日常や人生、感情を思う気持ちがつづられています。

佐久間ダムに沈んだ村の描写があります。佐久間ダムは房総にあり人骨山の出発点として使っていますが、そこではなく愛知県という事です。読み進めると村の名前が判明します。そこで地図を引っ張り出して探します。あれ、富山村が出てきませんね。さらに読み進めると豊根村に合併とありました。豊根村なら地図にあります。静岡県と長野県との県境を持つ場所でした。

登山の話も登場します。恵那山に只見川源流域に飯豊連峰、そして北海道のトラムウシまで。恵那山は作者が50代の頃登られたのでしょうか、下七は「根瘤またいで五十はわかいぞ」とあります。私50代にとっくになっておりますがまだ恵那山にも登っておりません。トラムウシでは悪天候に遭い、それに関連して遭難事件に触れているコラムが付いていました。あの遭難事故は私も大変興味を持って新聞を読んだので記憶しておりましたが、やはり現地を登っていないので想像でしかないことを改めて感じました。それにしても激務で有名な教職にあってずいぶんと全国を駆け巡ったものです。

高校山岳部の歌も収められています。顧問としてずいぶん長きにわたって貢献してきた作者ならではの視点ですから、時代の移り変わりとクラブの置かれている状況がよくわかります。部員集まらず、という事ですが、いやなんの、現在においても高校山岳部は活動を続けております。変わったのはむしろ学校の運営の方で、あれではもう山岳部だなんて呼べない状況だよなあ。

後半からの楽しみはモーターサイクルツーリングが詠まれていること、そしてあ、私の事!という歌も登場するのです。

先にも書いた通り文学的価値については分からない私ですが、現在短歌ということなのでしょうか、非常に軽妙で笑いが盛り込まれている作品が多く存在します。

じっくりと読んだ訳なのですが、日本の原風景に出会いたくなったらまたこの本を開くことでしょう。





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