母は有料老人ホームで最後の時を静かに待っています。このホームに移ってからは病院や老健で禁止だった面会が許可されるようになったので父や子を連れて面会に通っています。手続きも済んで、支払い関係や書類サインなどの他息子としてできることはもう何もありません。

んんん、違う、まだやらなければいけないことがあるじゃないか!母は一人っ子で兄弟がなく、甥姪も当然おりません。しかし、母には母方の従妹が2名居り、戦争が生んだ数奇な運命の元で生まれたそれぞれが一人っ子で尚且つ同じ家で育った過去があるのです。3人は兄弟のように、あるいはそれ以上とさえ思えるような絆で結ばれていました。3名の内長兄に当たる方は今年13回忌となりますが、母と同い年の従妹はまだお元気でいらっしゃいます。さらに、これまた数奇な運命をたどった長兄のご子息、ご息女が居りまして、従兄の子という関係ながら事実上の甥姪として大変かわいがっておりました。いや、むしろ溺愛していたと言っても過言ではないでしょう。そうだ、この方々を逢わせてあげなくては!

思い立ったらすぐ動きます。何しろ時間との戦いで、すでに孫さえ分からなくなっているのですから。便せん3枚に渡る手紙をしたため、速達で出すともう次の日にはSMSが届きました。ありがたいことに即面会に来てくださるというのです。ちなみに、私との正確な関係は「はとこ」となります。

駅で待ち合わせをしました。コロナ禍において全くお会いしていなかった方々でしたが、やや年齢を感じさせながらもしっかりとされた叔母と、同居して介護をしている甥(本当はもう少し遠いけど)は母と面会し、幼い頃の思い出などをお話ししてくださいました。声掛けに無反応だった母も時間が経つにつれ表情が出てきて、声は出ませんが目に涙が滲んできました。

日を改め、姪は私の仕事の日だったので妻が案内いたしましたが、やはり時間はかかったものの表情に変化が見られたという事でした。仕事も親の介護もある大変お忙しい中の面会はさぞかし大変だったことでしょう。しかし、おかげで息子としてやるべきことの一つを終えられました。

妻の作った先日の夕食です。バンズも粉から練った妻の手作りです。息子や娘にとってこれが母の味であり、妻の最後の瞬間に彼らが思い出すかもしれませんね。
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