2018年10月9日 2日目
4時、起床。食事を作りながら空を見ます。夜半にテントから出た時には満天の星空でしたが、もうガスが出ていて何も見えませんでした。
身支度を整えて、5時01分歩き出します。登山者の少ない山で、なおかつ平日とあれば誰にも会わない可能性もあるでしょう。そこで装備はそれなりの物を用意しました。アマチュア無線機と予備バッテリー2本、国土地理院地図とコンパス、ガーミンE-trexハンディGPSと予備バッテリー2回分、それにもちろんツェルトや非常食、ファーストエイドキットは大袋の方を。圏外がほとんどであるでしょうが、一応携帯電話も。
5時09分、将監峠到着。ここを左に行きます。まだ暗いのでヘッドランプはつけています。
やがてほのかに明るくなり、山の神土に着くころにはヘッドランプは必要なくなってきました。計算通りです。ここから先は道がはっきりしない部分があるということなので、明るくなってから歩きたかったのです。
山の神土からは東仙波、白石山方面へ足を踏み入れます。笹が覆い茂り、夜露が脚を濡らします。合羽の下を着た方がいいか一瞬迷いましたが、蒸れて中から濡れても同じなのでこのまま突っ込むことにしました。
思ったよりは踏みあとがはっきりしていて道に迷う心配は少ないのですが、笹の高さが膝上まであるところもありかなりズボンの裾を濡らしてしまいます。
紅葉もきれいな所が散見されます。いい季節に来たのかもしれません。
紅葉の向こうにピークが見えてきました。リンノ峰でしょう。
視界が開けました。リンノ峰で間違いなさそうですね。ここで、大きな人の声が聞こえました。
「寮母さーん」
ん、誰か俺を呼んだのかな?もしかして転倒事故か、また報告書書かなくちゃいけないのか。
「寮母さーん」
何回聴いてもそう聞こえてしまいます。職業病でしょうか。
声はリンノ峰の方から聞こえてきます。そちらへ向かうので、声の主と遭遇することができるでしょう。しかし、すぐに見えるリンノ峰ですが、胸まである濡れた笹に行動速度を遅くさせられてしまいます。そして脛を何かにヒット!痛ってー!
5時55分、とっくに日の出時刻は過ぎていますが、厚い雲にさえぎられていて太陽が顔を出してくれません。このあたりでようやく、「寮母さーん」が実は「ダイゴさーん」であることが判明。遭難者の捜索でしょう。またですか、昨年来た時にも同じようなものに遭遇しましたね。
リンノ峰を西側に巻きます。振り返ると太陽が上がってきました。
ここで声の主、埼玉県警山岳救助隊の2名と遭遇しました。
「遭難者捜索ですか?」
「そうです。醍醐さんという方です。何か情報はお持ちでしょうか?」
「いえ、初めて聞きました。」
「今日はどちらからですか?」
「昨日将監小屋で宿泊し、今日は和名倉山を往復します。」
「あ、テントの方ですね。」
「もし、この先で遭難者と遭遇したら保護して連絡いたします。携帯は圏外でしょうから、アマチュア無線で呼び出しますが、周波数は何を使えばいいですか?」
「我々は業務無線しか持っていないのです。ところどころ携帯は使えるところがあるようですから、そこで連絡するか、アマチュア無線でつながる方と連携して連絡をしてください。110番通報でお願いします。」
「山梨県警ですか?」
「いえ、我々は埼玉県警ですが、山梨県警も合同捜索に加わるのでどちらでも大丈夫です。」
※帰宅後、ネットで調べると醍醐さんという方は和名倉山から山の神土へ向かう途中、神土付近で道に迷って救助要請をしたということでした。無事保護されたそうです。
紅葉を楽しみながらも、山の仲間がどこかで救助を待っていると思いながら、がけ下などを覗きながら歩きました。
まるでトトロに会いに行く道のように、腰をかがめながら出なければ歩けない藪のトンネルを行きます。
ここを上がると西仙波です。
うん、絶景。富士も見えました。
そして今まで歩いてきた道と、右は唐松尾山です。
6時52分、東仙波通過。行動開始2時間になる所ですが、マラソンのトレーニングも兼ねているので休憩はしないのです。水はハイドレーションで適宜補給しています。
踏みあともしっかりしていて、思った以上に登山者がいることを思わせます。
吹上ノ頭の先が八百平、その向こうが目指す和名倉山です。まだまだあるなあ。
日が昇ってくるとガスは急速になりを潜め、視界が開けてきました。
奥に行けば行くほど紅葉も濃くなってくるようです。
アップダウンが連続しますが、傾斜が緩やかなので苦痛な感じは全くありません。問題は倒木です。あちらこちらに倒木があり、正規ルートを塞いでいます。迂回するにはやぶ漕ぎが必要です
ルートが不鮮明な部分もところどころにあります。ワイヤーが延々と打ち捨てられていて、目安にはなりますが正規ルートではない所にある場合もあるのでこれを頼りにしてはいけません。この辺りでヘリが飛ぶ音が聞こえました。捜索なのか、あるいは遭難者が見つかったので回収しているのか。
広い所へ出ました。さて、コースはどこでしょう。赤テープや踏みあとを探しますが、見当たりません。正解はここを左に曲がるでした。左に曲がると踏みあとに出ます。一事が万事そんな感じでなかなか思うように距離を稼げません。
8時01分、川又分岐通過。分岐とあり、左に踏み跡がありますが国土地理院地図にも昭文社の山と高原地図にもルートの記載はありません。
緩やかに登っていきます。この辺りを右に行けば水場とありますが、正直よくわかりませんでした。最初から行くつもりもなかったというのもありますが。
8時14分、二瀬分岐です。秩父湖へつながる二瀬尾根からの道とここでぶつかります。どちらから来ても和名倉山山頂方面にはここから向かいます。
踏みあとはこの辺りもしっかりしています。
ホタルブクロでしょうか?
さあ、もうちょっとですよ。
8時30分、和名倉山登頂しました。思えば、この山を知ってから35年と半年かかっての登頂となりました。知ってはいましたが、眺望は全くなくうっそうと茂った樹林に囲まれた非常に静かな山頂でした。ここでお昼ご飯を食べます。いや、ちょっと早すぎるか?ま、いっか。
9時06分、名残惜しいのですが山頂を後にしました。もう来ることが無いかもしれない山ですからね。
9時20分、二瀬分岐、9時27分、川又分岐通過。
下山途中、2名の単独行とすれ違いました。一人目はこの方、登頂後に二瀬尾根を秩父まで下るのだとか。やりますね。
またガスが上がってきました。山の景色は本当に一期一会であることを強く感じます。
帰り道の方が余裕があるのか、紅葉を眺めることが多いように感じます。しかし油断は禁物、下りで道迷いが昨日発生しているのですから。
10時27分、東仙波でちょっと休憩します。
これが結構おいしかったですよ。
10分休憩し、再び歩きだします。
この辺りは笹が深かったですね。今は乾いていますが、朝に通過した時にはびっしょり露が付いていました。
11時40分、山の神土、11時54分、将監峠通過。そして11時59分、テントに到着しました。
シュラフを干して。
醍醐さんが気になっていたのでワッチしていましたが、情報は得られませんでした。
そうそう、ささやぶの中で倒木に当ててしまった脛は出血していましたね。処置を施しました。
ちょっと昼寝して起きた14時40分、鹿駆除の猟友会が午後の仕事に向かいました。
今日のおやつはきな粉餅です。
このところ異常な忙しさだったので、無為に過ごす時間は本当に良い物でした。もっとグダグダしていても良かったぐらいですが、16時20分には夕食の準備を始めました。
明日はもう帰る日です。
3日目に続く
僕はスタミナと根性が無いから
まだまだ山歩きは訓練しないとなぁ…
ちょっとずつ頑張ってみようか!
スタミナ、根性は私に最も不足している事柄でもあります。ちょっとづつですが、頑張っている最中です。是非、ご一緒に。
迷う人が多いので知られた山ですが、その通りですね。
天気が良いのは10日だけで、まさか和名倉山とは思いませんでした。
ボクは秩父の二瀬ダム側から入れないかと考えていたことがありましたが夢が叶わぬまま。
いずれにせよ安全登山の為には3日用意しなければいけない手強い山ですね。
ありがとうございます。以前から狙ってはいましたが、天候の安定と暑過ぎず雪の降らない時期でなければ私の技術では安全に登れないと判断してなかなか行けずにいました。ようやく本懐を遂げたということになります。
すれ違った方が二瀬ダム側へ抜けているので、そちらのコースも行けないことはなさそうですね。調べてみようかと思っています。
全くその通りで、その時間が欲しくて登っていると言っても過言ではないかもしれません。