2012年10月31日 山行2日目
月明かりの中、ヘッドランプを頼りに雲取山頂を目指します。コースはいくつかありますが、案内板が立てられていますし、GPSには8年前の軌跡ログが表示されているのでカモシカ山行でも安全に行動できます。
小雲取に差し掛かるあたりでほんのり明るくなってきました。 寒いので毛糸の帽子をかぶります。
驚くべきことに、なんとご来光前に下山の人とすれ違ったとこです。結構年配な方々のパーティーでした。ご来光ご来光言って実力もないのにカモシカ山行するのもどうかと思いますが、あと20分足らずで日の出というのに下山してしまう人たちがいるとは。真っ暗な山頂に立って何を見たのでしょうか。世の中広いというか、私の理解をはるかに超えた人もいてびっくりです。
雲取頂上到着とほぼ同時に日が登りました。すでに多くの人がご来光待ちをしていました。厚い雲に覆われているので今日はだめかな、と思っていましたが、水平線上に隙間があり、そこに現れました。人が多く、うまく人を避けて撮影できませんでした。写っていないと話にならないのでとりあえず撮影し、あとでトリミングすることにしました。そして数分後、今度は上の雲に消えていきました。
さて、頂上では撮影だけして先を急ぎます。今日は日原鍾乳洞からバスに乗るのですが、13:30分の次は14:55、最終は16:18です。一応14:55の予定ですが、かなり余裕があると思われるので、切り詰めれば13:30に乗れそうな気もします。
雲取山荘に向けて下りていくと、続々と登山者たちとすれ違います。メジャーコースとはいえ、平日にこれだけの人が入山しているとは、深田久弥のペンの力は大したものです。
雲取山荘を超え、わずかに下ったところに雲取ヒュッテの残骸があります。近代設備を備える山荘のすぐ下ですので、経営が厳しかったのでしょうか。それとも後継者問題なのでしょうか。朽ち果ててお化け屋敷のようなおどろおどろしさです。
これを読んでくれているであろう、都立高校地歴の教諭、S先生と登山したときにはぜひここで宿泊したいものです。どうですか。いい雰囲気でしょう。
大ダワまで来ました。時刻は7時ちょっと前。この辺りで電話が鳴ります。妻からでした。
「なにが後で電話するなのよ!圏外だったじゃない。どこにいたのよ。」
いや、稜線まで出ないと電波入らなくて、結構微妙だから。
芋ノ木ドッケ手前の分岐に来ました。縦走路はここは巻くのですが、今回は長沢背稜へ行くので登ります。結構きつい登りです。しかし距離は短く、一気に登れました。芋ノ木ドッケ頂上で本日初めての小休止。そういえば、ここの立つのは初めてです。なぜか一番高いところには何もなくて、その下に芋ノ木ドッケの立て看板があります。
いよいよここから長沢背稜です。またVX-7をザックの外に付け、長いアンテナを突き出してラジオと145.00MHzの傍受をします。もちろん熊対策です。
芋ノ木ドッケを下りて直ぐに表れたのが長沢背稜への分岐です。右を指し示す看板の先には、あ、道がない!そうなんです。大量の落ち葉に隠されて、ルートが不明瞭になっていたのです。下の写真にルートがあるはずです。わかりますか?私は分かりませんでした。
まずは地図で現況の確認。この先尾根が狭くなっているので、そこまで行けば大丈夫なはず。そこまでに沢筋や違う尾根に突っ込んでしまうと危険でしょうが、GPSは正常に作動し、そこに打ってある芋ノ木ドッケポイントまで戻ることがで来るのでその点では安心です。
地図でコンパスをセット。コンパスの指針で進む方向を決め、同じ手で持つGPSで目的地までの距離が減っていくことと進路を確認。軌跡の形から現在位置とあるべき登山道の存在を探って進みます。高度計も現在位置確認と、必要以上の下降への警戒によく確認します。
もはや雪山のように、夏ルートとは関係なしに進みます。やがて推察通り、尾根が狭くなってきたところで赤テープと、ところどころに踏み跡がみられるようになってきました。しかしここで油断してはいけません。道が曲がっているところまで来たらコンパスをセットしなおし、尾根を外さないようにします。しかし、桂谷の頭あたりからは完全に登山道然としていてもはやコンパスは不要な感じでした。頭から長沢背稜までは簡単な登りだけで、あっさりつきました。人間の形跡は登山道だけでなく、残念なことにごみが結構散乱していました。拾えるものは拾いましたが、錆びた缶詰の缶などは回収できませんでした。
長沢山頂上にて。おいおい、ヘッドランプ外し忘れているよ。
ここから下り始めるとすぐ、このルートで初めての人と出会いました。。どう見てもわたくしの父より年上です。そしてわたくしより大きいザックにたっぷり荷物を入れて、ストックを付きながらゆっくりとした足運びで登ってきました。
「こんにちは。」
「ああ、こんにちは。今日はどこから?」
「はい、奥多摩小屋から雲取越えで来ました。」
「一杯水まで?」
「いえ、そんな遠いところは、、。今日帰るので天祖山経由で日原に下ります。」
「そう、そっち行くの。ふふふ、あれは大変だよ。登りがきついし、下りもいやらしい下りだよ。私もあそこの頂上でゲリラ豪雨にやられたことがあってね、社で雨宿りしたことがあってね。」
「何回もここに来られているんですか?」
「そうね、ここばっかりだけどね。何回来たかな。今日は一杯水から雲取まで行くよ。私はここで行き倒れるまで登りますからね。もすぐだろうけど、行き倒れますよ~。」
まだ少し下ると、また人と行き会いました。今度は私より若い感じの、大きなカメラを下げた人。
「こんにちは。」
「こんにちは。この先、落ち葉がひどくて道が不明瞭だから、気を付けてください。」
なるほど、そこから10分ほど下ったところで道が消えています。地図を出して確認。ピークの北側から巻いて鞍部に出て、そこが分岐になってるはずです。コンパスをセットし、落ち葉を踏みしめながら、歩きやすそうなところを選んで行きます。やがて赤テープを巻いた杭が見えました。そこからは落ち葉に埋まってはいるものの、杭で土留めして作った登山道がありました。しかし、またこれが消えてしまいました。コンパスとGPSの指し示す方角へトラバースしていくと、下の方に杭が並んでいるのが見えます。上過ぎたようでした。そのまま山複をトラバースして進むと登山道も上がってきて合流。そして鞍部に出ると案内板が、そこからすぐ下に、長沢背稜、天祖山の分岐が現れました。どうにか落ち葉に埋まった長沢背稜を辿ることができたのです。
時刻は10時15分。11時に天祖山山頂なら13:30バスに間に合いそうです。休憩は後、まずは歩きます。石垣で作られた道や、立派な木道橋がかけられていたりするのですが、ところどころ踏み跡程度で、しかもケモノ道の横断があり、紛らわしい所がありますが、とにかく足を速めて進みます。2回、単独行の方とすれ違いました。そして梯子坂のくびれに到着。ここからは登りです。長沢山のくだりで出会ったおじいさんに言われた、きつい登りなので覚悟をしていました。
くびれから少し登ったところで、道が途絶えています。地図では尾根をまっすぐ登って行くようになっていますが、とても登れる状態ではありません。よく見るとうっすら踏み跡が見え、人間の足跡が判別できます。左に巻いているようです。コンパスをセットし、GPSとともに確認しながら登ります。
踏み跡が消えました。さっきすれ違った人はどこを通ったのでしょうか。幾条かの筋がありますが、みな途中で消えます。コンパスとは明らかに違う方向へ行く筋もあります。鹿道かもしれません。
これ、登山道で間違いないですよね。でも前後消えています。この下にも同じような道が数本ありました。
また、雪山の要領で落ち葉を踏みしめながらルートを切り開いていきます。手前のピークは完全に巻いてしまいました。もしかして上に登山道があるのでしょうか。ザクザク言わせながら登っていきます。コンパスで何度も方向修正しながら、天祖山に向けて進みました。GPSが頂上まであと300m示すところで、頂上から降りてくる人がいて、かなり離れたところを通り過ぎて行きました。あっちが正規ルートだったか、とそちらに目をやると、たいして変わらないように見えました。いったいどこがルートだったのでしょう。
コースタイム通り登頂できました。時刻は11:18です。ここからコースタイムで2時間のくだり、そして40分の林道歩きです。13:30まで2時間12分しかありません。林道はかなり飛ばせるので20分で行くとして、少し早足で下ればぎりぎり間に合う気がします。写真だけとってすぐに下山します。
下山路はしっかりと赤テープが巻いてあるので道を外す心配はありませんでした。時々見失いますが、きょろきょろ探すと、遠くに見えたりします。高齢パーティーや若い兄ちゃんたち、家族連れなど、意外なほど多くの登山者とすれ違いました。下りはひどく険しいところがあり、転落事故も多発しているようです。急げるところはとことん急ぎ、ルート確認と危険個所には時間をかけるようにしました。下ってくると、意外なほど紅葉がきれいなところがありました。紅葉ポイントはずいぶん下に下がってきていたのです。
下っても下っても、高度計のメモリはなかなか減っていきません。九十九折れを飛ぶように下っているうちに、腿前側の筋肉に痛みを感じるようになってきました。これはやばい。回復するまでヒルクライムトレーニングに支障が出てしまいます。時間的には余裕がありそうです。でも、この先また慎重に行かなければならないポイントがあるかも、と思うと、ペースを落とせませんでした。
ようやく八丁橋のところで林道に出ました。時刻は12:45。およそ1時間30分で下ったことになります。バス時刻には余るくらいなので、それほど飛ばさずに済むでしょう。しかし、林道歩きは長く感じます。だらだら歩くのは好きではないので、自然とペースが速まります。それに早く着けば、バス停前の商店でタンパク質の多い食品を買う時間も取れます。13:13分、日原鍾乳洞バス停に到着。せっかく早くついても商店は閉まっていました。電話で下山報告をしました。これで一安心です。
奥多摩でバスを降りると、雨が降っていました。今回初めての雨でした。自宅には17時少し過ぎに到着。腿の筋肉痛は全く収まることなく、道具の手入れに支障をきたしました。今でも(11月3日)まだ痛みは残っています。
別件:夕べ昔の生徒たちの集まりに呼ばれました。散歩中のお父上と水元公園で偶然お会いしてとっても懐かしかった、という女生徒(51歳女性)がいました。