2011年9月16日 6日目
 
車の中で寝ていたが、激しい雨の音で目を覚ますことがありました。それでも、朝には疲れも取れ、よい目覚めです。まずは昨日作ったケルンを見に行きました。やや水量は増えてはいましたが、それでも水平方向に10㎝程です。あんなに降ったのに、増えた分がこの程度なら、これからよっぽどのことがない限り行けそうに思われます。ただ、これからどれだけ降るかわからないので、やはり早い方がいいでしょう。
 
食事を済ませると、漕行の準備にかかります。雨に備えてゴアテックスのレインキャップをかぶりました。この帽子が私の頭に乗っているのは奇跡と思える出来事があったのです。
 
この年の7月に、北アルプス常念山脈を妻と娘、三人で縦走したときのこと。蝶ヶ岳から三股に下り、上で電話予約していたタクシーを探しました。違う会社のタクシーは待機していたのですが、一応声をかけると違うとのこと。まあ、時間ぴったりということはないだろうと気にせずそのまま待ちました。しかし、20分経ってもちっとも来ません。ついでに向こうのタクシーにも客が来ません。運転手は何かを感じたようで、無線で確認を取ってくれました。なんと、私の予約したタクシーはすでに実車していたのです。東京から来たSさんだそうで、名前も似ています。行先も同じく四季の郷だそうで、おいおい、その登山者、何やってくれんだよ、タクシー会社の名前はクルマに書いてあるじゃないか。乗るなら確認してからにしてくれよ。
 
そんなわけで、20分遅れで四季の郷に到着。入浴し、食事を食べ、さて、駅までのタクシーを呼ぼうとしたら、娘が
「あ、帽子を前のタクシーに忘れた!」
というではありませんか。下山途中、雨に降られたので帽子をかぶっていたのですが、タクシーの中で脱ぎ、眠ってしまって降りるときに忘れたというのです。この娘は毎度やらかすのですが、結構値が張るものなので一応あれは6,500円もしたのに、と本当は価格なんてとっくに忘れていたのに戒めを与えておきました。
 
呼んだタクシーが来るのを待っていると、娘が、
「あ、あの人さっきの運転手さん!」
というではありませんか。私は顔なんて覚えていなかったのですが、帽子は忘れるくせに変なところを覚えています。
 
娘に声をかけさせると、運転手さんは次の客を乗せるところで気が付き、営業所に戻ったら預けてこようとトランクに入れておいたそうです。娘のことも覚えていて、1時間ぶりに帽子と対面を果たしました。呼んだタクシーでもないし、電話番号もわからず、おそらくここで会えなければそのままになっていたことでしょう。
 
そんな帽子ですが、雨の日にはとても役に立ちます。合羽のフードでも雨はしのげますが、左右の視界が遮られてしまいます。カヤックの場合、動力船が後ろから来ることもあるので視界が広くなければ安全に下ることはできません。
 
7時5分、漕行開始。漕ぎだしてすぐに勝間の沈下橋をくぐります。この下をくぐるとき、早くも雨が降り出しました。いかにも台風系の、風を伴った強い降りです。しかし、カヤックに乗るときにはそもそも濡れることが前提の服を着るので、まったく不快な感じはしません。ゴアテックスの帽子もいい感じです。
 
雨はすぐにやみました。下り始めてすぐにかわらっこ前通過。ここもレンタルカヌーやカヌー教室などあるのですが、朝早く、しかもこの天候ですのでカヌーはおろか、誰も河原さえ来ていません。
 
高瀬の沈下橋をくぐると、やがて瀬音が聞こえてきます。今日のコースで最もグレードの高い親の瀬です。一応下見はしました。右岸の本流を行けば間違いなさそうです。流れに乗ってGo! 結構楽しめました。
 
川澄大橋が見えてきました。ここの下で行程の1/3でしょうか。ここまで1時間30分かかっています。ここで8時30分ということは、このまま下ればあと3時間、11時30分にゴールすることになります。
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増水する前に下りたいので、休憩は取らずに先を急ぎます。三里の沈下橋をくぐるあたりから、再び雨が降ってきました。最初は普通の降りでしたが、佐田の沈下橋前まで来るとスコールと呼んでおかしくない降りとなりました。頭が濡れないと、そんな時でも気分の落ち込みはなく、案外快適です。いよいよ激しくなってきたところで、PFD(ライフジャケット)につけておいたカメラを動画モードにして撮影しました。この映像はYouTUBEにアップしてあります。
 
 
 
カメラがなかなか思った方を向いてくれなくて、うまく撮れなかったのですがやり直しているうちに雨は次第におさまり、やがて止んでしまいました。止んだところで佐田の沈下橋をくぐります。
 
そこからは瀬らしい瀬もなく、淡々と漕ぎ進みます。雨もそれきり降らず、川も増水している気配は感じません。
 
地図では最後のカーブを曲がっていると赤いトラス橋が見えてくるはずです。この川下りの終わりが近づいていることが、寂しさとなって襲いかかってきました。本当に楽しい4日間でした。思い返せば激しい瀬にもまれた1日目、艇がバーストした2日目、漕ぎはサボった3日目、そして雨にたたられながらも大河の様相でおおらかに下れた今日。これ以上、川を下っても瀬もなく、潮交じりとなり、艇の手入れも塩抜き作業が必要になるのでやめておいた方が良いのは分かっているのですが、やはりもったいない感じはどうしても拭いきれません。
 
ついに赤トラスが見えてきました。どこでも上がれる河原ですが、車の入れそうな河原を探しているんだと自分に言い訳をして、ぎりぎりまでさざ波程度の瀬を越えていきます。そしてついにシートから腰を浮かせ、11時10分、降り立ちました。4時間座りっぱなしだったので脚が萎え、うまく立てずに川の中に座り込んでしまいました。やや温かい水で、気持ちよく浸かっていました。
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さて、ここで艇をばらし、水抜きをします。雨に降られても、艇の形をしているよりはばらしておいた方が水の浸入を少なくできるからです。そして自転車へ。自転車は昨日から置いてあるので久しぶりの対面という感じがしています。
 
ここから勝間まで自転車で走ります。走っていると、途中激しい雨に見舞われました。濡れるのが前提のネオプレンパンツと防水パドリングジャケットを着ている上、ロープ切断用のナイフの付いたPFDを河原に置いておけず着たまま自転車に乗っていたので、暑いことはあっても寒さは感じることなく、水しぶきを上げながらバンバン走ります。最近、ナイフの携帯をしていると、「必要性のない刃物を隠し持っている」疑いで警察に逮捕されるらしいですが、川下りに絶対的な必要性があるということと、「隠し持って」いなくて見えるところに付けてあるので安心です。実際、流れの中でロープが絡んだら即刻切断できなければ生命にかかわります。
 
勝間に到着するとうまい具合に雨は止んでいました。昨日は気が付きませんでしたが、看板が立っていて、釣りバカ日誌14作目のロケ地だそうです。帰京したら見ようかな。
 
雨が降り出す前に自転車を積んで、といきたいところですがそう簡単には行かず、セルフシャッターで写真を撮ったりしているうちにまた降り始めてしまいました。いったい何をやっているんだか。イケメンでなければ雨に当たらずに済んだのに、その心配のない会社の同僚○○君がうらやましい。
 
車を走らせているとこれまた激しい降りに。しかし、河原に着くころには晴れ間も出てきました。艇の水分を雑巾で拭きとってから仕舞うことができました。車にはブルーシートで箱型に荷台を囲ってありますが、やはりなるべく水分は持ち込みたくないのです。
 
十分乾かしてから積み込みました。河原は大きめの砂利が堆積していて、2輪駆動車では間違いなくスタックしてしまうでしょう。しかし、エスティマハイブリッドも4輪駆動とはいっても後輪は電動で、しかもコンピューター制御なのでどの程度踏ん張るか未知数です。
 
インパネのVSCインジケーターは時々点灯します。しかしアクセルコントロールに後輪もしっかりついてきてトラクションを十分に発生させていることがわかります。低い部分に水が溜まり、砂利の深いところを走ることを余儀なくされましたが、それでもスタックする心配はほとんど感じませんでした。もちろん私が以前乗っていたハイラックスダブルキャブに比べたら、あちらはパートタイム4駆、車輪径も最低地上高も、駆動する出力も違うので全く勝負にはなりませんが、エスティマでもこの河原の走行するには必要な性能は確保している感じです。
 
さて、この河原にも芝生のキャンプ指定地があります。しかし、増水時には水没する旨が書いてあります。これから台風はますます接近するので、安全を考えると土手の上、もしくは土手の向こうでキャンプしたいところです。土手の上でよいキャンプ地はないかと探していると、突然激しい雨が降ってきました。んー、これはだめだな。車のナビでG-Bookに接続。この周辺のホテルで安いところを探します。安い順に電話をかけ、ようやく空室があったのが中村プリンスホテル。夕食は準備できないということですが、外食すれば済むことなので投宿することにしました。プリンスホテルは学生時代、赤坂のそれでアルバイトしていた経験がありますが、このプリンスはコクドとはどんな関係なのでしょうか。やはり無関係かな?
 
小奇麗でなかなか良いホテルです。荷物を整理したら、早速中村の街を探検。料亭がいくつもあるし、観光に注力していることをうかがわせます。大きな看板に山内一豊と千代と思われる二人ががサーフィンしているものすごいデザインがありました。霊園の広告でした。この地で、戦国と言ったら長宗我部、山内は後から割り込んできたよそ者で、しかも自分たちを上士、長宗我部を下士と身分を分けたので不人気と聞いたことがあります。もしかして、大河ドラマ、功名が辻で状況が変わったのでしょうか?
 
結局ホテルにいちばん近い料亭に入りました。久しぶりの自炊でない食事です。思い切って(でもないか)四万十御膳なるものを注文しました。これに鮎の塩焼きが付きます。さすがにうまい。
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ぜいたくついでに帰りにスーパーへ寄ってキリンフリーとつまみを購入。それを飲んで、いつも通り20時前には就寝しました。